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◆受講生Fさん◆

 

 第3回実技講習 深雪訓練 かぐらスキー場

 

(1日目)

●踊り出すシール

この日は午前中からアクシデント発生。かぐら第1高速リフトを降りると風雪が舞っていた。体感温度が下がってかなり寒い。シールをつけるべく準備に入るが、接着面があっという間に粉がふいた様な状態になってしまい、スキー板に張り付けようとしても全く張り付かない。しまいには風にあおられたシールがスキー板の上でバタバタと踊り出す始末。講師がテーピング用の布テープをスキーの前後2か所で巻き付けて「応急措置」してくださったものの、歩き出すとすぐにシールが外れてしまってどうにもならない。当方、ハイクアップ断念を余儀なくされ、講師2人に付き添われて和田小屋に退避した。前途多難な幕開けーー。

●信じちゃいけない「うたい文句」

他の受講生もシール貼りに苦労していたが、当方の初歩的ミスはシールを丸めたままとはいえ袋から出して裸のまま外気に触れさせてしまったことだ。加えて、購入したGEKKO製シールがうたい文句とは違って低温下の風雪下では全く用をなさなかったことも想定外だった。道具選びはスキーに限らず難しい。経験を積めば自分の技量や用途に合った道具を選べるようになるのだろうが、初心者は経験者にアドバイスしてもらった方がいい。とりわけスキーの上手い下手とは関係がないシールのようなものはグリップ力、粘着性、使い勝手のよさなどを十分吟味して選ぶべき。当方は後日、ブラックダイヤモンド製のシールに買い替えた。取り扱う際、GEKKO製シールよりも神経を使う必要はあるものの、その後は一切トラブルが起こらなかった。シールは山スキー学校のオリエンテーションで話を聞いてからお店に行くことをお勧めしたい。

●転んでもただでは起きない!?

午後は和田小屋からみつまたエリアまで高度を下げて深雪講習へ。ここでもスキー初心者といっていい当方は四苦八苦。圧雪されたゲレンデと未圧雪のオフピステではスキー操作にかなりのギャップを感じた。講師から「スキーは板の真ん中に乗る」、「両足をそろえたままスキーを操作するように」などとアドバイスされるが、スピードの変化や微妙な起伏にうまく対応できず、後ろに飛ばされたり、前につんのめったり。パウダーだから転んで怪我する心配はないとはいえ、傾斜がないところで転ぶと今度はうまく立てない。スキーの先端がヘンな方向に潜り込んでしまうと、それこそ万事休すだ。講師に引っ張ってもらったのも2度や3度ではなかった。「転んでもただでは起きない」男にはなれなかった。深雪では回り込まず直線的に滑るように、スキー板をリズミカルに踏んで方向付けをするようにと言われても、感覚がつかめずギクシャクした滑りが続いた。

●なるほど・THE・シール講習会

和田小屋の夜は講師部屋でシールの貼り方講習会が開かれた。シールは貼る直前まで袋に入れておいてなるべく外気にさらさない。収納する際に使うあて紙をつけたままシールをスキー板に貼ってから、あて紙を横から引っ張り出すようにしてはがすやり方などを教わった。感心することしきり。山スキー関連本は何冊か斜め読みしたが、裏技的なテクニックは書かれていない。講習会のメリットの一つはこうした実践的なノウハウを学べることにある。その後は車座になっての酒盛りと「○○談議」が深夜まで続いた。当方、途中から爆睡したので記憶がほとんどないが、「愛」とか「誠」とか「人」とか「色」とか「空」とか、何やら深遠な話題だったらしい。

 

(2日目)

14 large

 ●朝一のファーストトラック

この日は風雪も収まり、朝一番でファーストトラックを狙うことに。上手な受講生はどんどん滑るが、当方は深雪にスキーを取られて転倒。急斜面でも縦よりも横に滑ってしまうからしばしば止まることに。講師の方をはじめ皆さんには迷惑のかけ通しだった。

●スキーラッセルは花魁道中のように

ゲレンデを滑った後はシールを付けてハイクアップ。ジグザグ登行する際の方向転換や、花魁道中をまねたラッセルの仕方などを学び、かぐら第5ロマンスリフト上部に。ここで3組分かれてシャベルコンプレッションテスト(CT)を実施。モデレイト(10~20回)で亀裂が入ったが、不規則な形だったことから滑走のゴーサイン。このときはヘロヘロした滑りながら何とか転倒せずに集合地点に到着。ほんのわずかだが、スキーの先端が浮き上がる感触をつかむことができた。

●収穫は深雪への慣れ

再びハイクアップで別の斜面に。講師が受講生1人1人の滑走姿をビデオに収める中、ノートラックの斜面を気持ちよく滑る。といっても、スキーを回す際のタイミングがうまくつかめず、相変わらずギクシャクした滑り。その後は下った谷を向こう側に登り返す格好で山上の「反射板」がある地点に。巻機山などがはっきり見える中で昼食をとった。気持ちがいい時間。これもスキー登山の醍醐味の一つだろう。最後の下りも悪戦苦闘しながらも何とかこなしたが、みつまたロープウェー直前のオフピステで大転倒。まだまだ余計なところに力が入っているためか、最後の方は足がガクガクになってしまった。遅々たる歩みかもしれないが、深雪の感触に慣れてきたのが収穫だった。

 

第5回実技講習 総合滑走 蓮華温泉ツアー

 

(1日目)

 ●前泊は畳にゴロ寝

早いもので最終の実技講習会。前日深夜、栂池ゴンドラそばの鷲の屋着。経費節減のため布団は使わず畳にそのままゴロ寝するが、疲れがたまっているせいか結構寝られた。翌朝は行動開始時間が若干前倒しされ、ゴンドラ、ロープウェイを乗り継いで栂池自然園へ。一昨年の9月、ここから天狗原、白馬大池を経て白馬三山、そして唐松岳から五竜岳まで2泊3日の日程で初めて単独縦走したことを思い出す。そのときは自分で山スキーをやるなんて想像もしていなかった。

 ●直登で汗だくに

A班は女性リーダーを先頭に行動を開始。天狗原まで高度差約400メートルの雪原を登り始める。この週末、東京では桜が満開・見ごろ。例年と比べて桜前線の北上もかなり早いようだ。山国もすっかり春めいてきた。とにかく暑い。フリースジャケットを脱いでも「直登」に次ぐ「直登」ですぐに汗だくとなる。途中で当方が先頭に立つ。少し楽をするため、ジグザグ走法に切り替えた。平坦地に出ると、白馬・乗鞍岳方面に向かっているパーティーが左手方向にたくさん見える。いつの日か乗鞍の大斜面をパウダーで滑ってみたいが、そんな日は来るのだろうか。

 ●「横滑り」が頼り

祠前で小休止後、平原を横断して滑走ポイントへ。風がかなり強い。弱層テスト(CT)は少し下降した地点で行うことにしてシールをはずす。「ドロップイン」という言葉通り、軽やかに飛び込めればカッコいいが、当方そんな技量はなく「横滑り」を多用して慎重に下る。CTの結果、「ハード」でも大きな亀裂が入らなかった。雪は硬く、これはこれで滑りにくい。大転倒しないことだけを心がける。

 ●難しかったトラバース

天狗原から蓮華温泉までは古典的なルート。ピンクテープがかなりの密度で木々に巻きつけてあるから、吹雪にでもならない限り道迷いする恐れはなさそうだ。しかし、晴天時であってもピンクテープやトレースがなければ地図だけを頼りにして下れるかどうか。沢まで下らないでトラバース気味に進む部分が結構長く、コースを間違えたり、高度を下げすぎると元に戻るのが大変だからだ。滑落するとヤバそうなところも数か所あった。講師はスイスイ進むが、こちらはおっかなびっくり。前走者との距離がすぐ開いてしまう。技量、経験の差は大きい。

 ●夕食前のサプライズ

蓮華温泉に無事到着。まずは温泉につかってリフレッシュ。A班は女子を中心に夕食前のサプライズを準備する。当方も材料の一部を荷揚げしたが、講師の方々に喜んでいただけて何よりだった。夜は恒例の哲学談義。こちらは例によって爆睡。「愛」と「誠」、「愛」と「人」、「愛」と「欲」……。参加者によると、話はいつも以上に盛り上がったようだ。

 

(2日目)

 ●朝一でスリップ

泣いても笑ってもあと1日。天気は快晴。小屋前に立つと、朝日に輝く北アルプスの最北端、朝日岳から雪倉岳、白馬岳に至る稜線がドーンと迫ってくる。一昨年夏、2泊3日の行程で富山方面から朝日岳に登り、栂海新道を親不知まで下ったことを思い出す。昨日通って来た道を逆走し、最初の橋を渡って登り返す。ここが要注意ポイント。2番目に取り付き、途中、先頭が行くコースを外れて方向転換したところまではよかったが、斜登行する途中でスリップして片方のスキーを外してしまった。講師と仲間にスキーを一本ずつ持ってもらって何とか窮地を脱したが、単独行動だったらどうにもならなかった。

 ●初めてクトーを使う

ヤッホー平に滑り降りるポイントに到着。他のパーティーもいくつかあって、次々にドロップイン。滑りは相変わらずだが、何とか下りきった。その後、ヤッホー平まで登り返し、そこから先はほぼ平坦な車道を栂平へ。本日2つ目のポイント、角小屋峠までの急登を前に初めてクトーをつける。朝一でスリップをやったから、一歩一歩慎重に歩を進めたが、詰めのクマザサ地帯を突破するのに難儀した。コース取りがまだまだ甘いことを痛感させられた。

 ●連写された決定的瞬間

角小屋峠からは雪倉岳、朝日岳、そして栂海新道の一部をなす稜線がよりはっきり見える。日射しは強いが、コンディションは最高。苦労して登ってきた甲斐があった。CTも前日同様、ハードで問題なし。後はウド川、ワサビ沢に向かって高度を下げ、広葉樹林帯をゆるやかに下っていけば目的地の木地屋に到着する。気を抜いたつもりはなかったが、広葉樹林帯でツリーホールに落っこちそうになった。尻餅をつくような形で転倒して事なきを得たが、講師に決定的瞬間を連写されてしまった。次のアクシデントは小さな池の上を横断している途中で頭から前のめりに転倒してしまったこと。スキーを何かに引っかけたらしい。心の準備が出来ていなかっただけに自分でもびっくりした。2日目も後半になって右ひざに力が入らなくなっていたから、この影響もあったと思われる。

 ●「いまでしょ!」

木地屋に到着した時は、正直ホッとした。マイクロバスで栂池に戻り、そこから講師の車に分乗して帰京した。日帰りの山歩きから山小屋を利用した北アルプス等の縦走、テント泊と進み、夏山だけでは飽きたらなくなって冬山にも手を伸ばすようになると、自然と山スキーが視野に入ってくる。自分の経験に照らすと、山スキーをやろうかどうか悩んでいる、いつやればいいのか、と悩んでいる方がいれば「いまでしょ!」と言いたい。スキーの技術が心配で申し込む際にちょっと躊躇したが、講習会に参加して本当によかった。講師の皆さん、同期生の皆さん、いろいろありがとうございました。