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◆◆第三回実技講習◆◆

【山域・場所】信越・鍋倉山

【日程】   2011年2月18日(金・夜)~20日(日)

【目的】   雪洞・ビバーク訓練

 

●受講生 7

 

TYG第8期 第3回実技講習 鍋倉山 雪洞訓練 C班レポート       

 【パーティー】 講 師:M氏、H氏

         受講生:S谷、M谷、F田

         居 候:テレマーク女子

         侵略者:匿名希望(ご想像通りです)

 

 今回のTYG-8第3回実技講習は、雪洞ビバーク訓練を通じて雪山での対応技術の幅を広げ、TYGの目的である「自立した山スキーヤー」を目指す上での重要な位置づけである。

第2回の神楽深雪講習において遅れをとった私は、必然的に荷が重くなる今回の実技講習には参加辞退も熟慮した上での参加であったが、神楽でお互いの体力・技量が把握でき、私のペースに合わせていただいたおかげでまたとない好天の中、初日は余力を残して稜線に立つ事ができた。さらに二日目は苦労しながらも神楽とは別人のようにツリーランを楽しむ事ができた鍋倉山となった。以下に若干の記録とともにその感想を述べる。

 2月9日(土)8:00民宿「大手荘」を出発。温井集落の標高560m除雪最終地点に車を置く。

9:10ビーコンチェック後、班ごとにシール登行にて鍋倉山の懐へ。10:00鍋倉山荘通過。身体の調子も出てきた。その後、標高950m付近の北斜面にてCTを実施。いつも行動の早いS谷さんが真っ先にピット掘りに着手。積雪は3m以上、20㎝の新雪層を確認。結果はCTNと判定。

高度を上げるにつれブナの森深く誘われ、青空と霧氷の花を見上げながら稜線を目指す。

11:50黒倉山から北東に派生する稜線へ飛び出ると黒姫・飯縄、妙高・火打等の頚城の山々そして日本海までが我々を迎えてくれた。振り返ると鍋倉山はこの時間も全山霧氷に輝いている。稜線にて全員で記念写真後、いよいよ稜線直下南側斜面1130m付近で雪洞構築にとりかかる。

 今回の雪洞訓練では、基礎的な不時露営技術を学び雪山生活技術の幅を広げることがテーマであったが、「いかに快適に楽しく飲める環境を整えるか」というモチベーションが勝り、M校長からは「趣旨と違う!」とのお叱りを受けながらも我がC班はM橋、H谷両講師の指導の下にしっかりと快適な居住空間を整えていった。

 このような遊び心を持ちながらも、M橋・H谷両講師の手強く硬い雪での効率のよい雪洞構築手順・手際、経験に裏付けされた高度な雪山技術に間近で触れる事ができ、2回目の雪洞訓練となる私は多少の知識はあったとはいえ、雪質による様々な対応技術は滑走だけではないことを改めて知る。また、この体験によって体力面での余力を残した早めの決断・行動の重要性と実際のビバークに遭遇した場合、この対応技術の差が明暗を分けるのか!ということも実感できた。

 夕日が妙高に傾きかける頃ようやく雪洞は完成。出入口にM橋講師お手製の扉がつくことで一段とグレードアップし楽しく夕餉が盛りあがったのもつかの間、この羨望の的となった雪の殿堂は足元のおぼつかない侵略者達によりその扉は破壊され、テントシューズの羽毛は無残にも飛び散り、食料、飲料用アルコール類は瞬く間に消費されていった。挙句はコッフェルの内容物は胃袋以外の部位にも吸収消費される事態となり、エアマットの下は朝までその液体に浸され快適性を追及した雪洞は瞬く間に変貌を遂げていった。このような不時露営?事態においても水の作り方、各種レシピ、ガスの燃焼効率改善、チタン製コッフェルでの炊飯(実はこれだけは失敗であった)など、お二人の講師の様々なノウハウや手際を拝見しながら22:30ようやくシュラフにもぐりこむことができた楽しく有意義な雪洞訓練初日であった。

来てよかった!!気温マイナス7度、無風。明日のパウダーに期待。

なお、この緊急事態のさ中にも熟睡のS谷さん、事態を承知でシュラフを持ち込み朝まで居候のテレマーク女子がいた事を付け加えておく。

 翌20日(日)は6時起床と同時に朝食準備にかかる講師の手際に再び感心。私はといえばシュラフやマットの収納に手間がかかり、結局出発は8時。もう少し大き目のザックにすることで柔軟な対応ができるのではないかと思いながらも、実はいつも荷物が多すぎてしまいうため、必要意最低限の荷の見極め・工夫が今後の課題であり重要な山の技術の一つであると感じた。

 外は今日も快晴、霧氷も変わらず輝いている。新たな期待を胸に稜線をシール登行。ほどなく到着した黒倉山は、夏は殆ど眺望がきかないそうであるがこの時期は360度の大パノラマだ。雪山に登る者へのご褒美に感謝。8:35今回の目的の山である鍋倉山に登頂。全員で記念写真。

 さあ、シールをはずしていよいよ滑走だ!身体のストレッチそして心の滑走モードON!

9:00不安と期待に逸る気持ちを抑え霧氷に覆われたブナの巨木の森に滑り込む。表層の新雪は私にはやや重い。と思いきや、お~ッなんと!板を回していく事ができる。よしっ次はあそこでターンだ!これがツリーランのパウダーってやつか。何と爽快な事か。思わず笑みがこぼれる。

 安心するのもここまで。先行の講師が待つ場所は急斜面の上だ。M谷さん、S谷さんは果敢に滑りこんで行くが私は斜面を覗くなりプライドを捨て斜滑降で急斜面回避を目論む。

斜度の緩い所を見つけては、腰の引けた大回りでなんとか急斜面下部に合流。この間、斜滑降に起因する局部的な表層のズレが発生したがこれが「スラフ現象」のひとつなのだろうか?そういえば滑走前にCTをやっていなかった。実施していたら果たしてどのような結果が出たのだろう。

 やっとの思いで急斜面を抜け再び集合するとそこには「森太郎」。「ブナの巨木の谷」の中でも圧倒的な存在である。講師の方々の先導で北斜面を拾いながら森太郎へ導いていただき感謝。

 ルートファインディングの妙、斜面の向きによる雪質の違いを実感できたツリーランであった。

いつの間にか霧氷も消え、春の気配を感じながら緩斜面をゆったりと滑走。10:00徐々に雪が重くなり太ももがつらくなってきたころM橋講師ゆかりの鍋倉山荘に到着。2階の積雪期出入口より小屋に入りスキーブーツを脱いでの大休止。

ここで第4回総合山行(栂池~蓮華温泉~木地屋)計画の打合せを行った後、名残を惜しみながら鍋倉山荘をあとにした。11:00すっかり春の陽気の温井集落に到着。板を脱ぎながら次回の蓮華温泉総合山行(東日本大震災により中止となった)に思いをはせ、次週のオプション講習に心弾ませながら自信回復のきっかけとなった鍋倉山に別れを告げた。

 今回は天候にも恵まれ、噂に違わず素晴らしい鍋倉山でのツリーラン!言葉にできない体験をさせていただいた。この体験を経験として蓄積し活かすことで次のステップにつなげたいと思う。

講師の皆さん、TYG-8受講生の皆さん、ありがとうございました。

 

●受講生8

 

 東京山スキー学校入校にあたり、個人的に最も興味があったのが、雪山でのビバーク技術の学習でした。そういう事もあり、鍋倉山での雪洞訓練山行には自然と気合いが入りました。前日夜、戸狩温泉の宿に集合し、翌日の山行について簡単な打合せを行い、翌日朝、温井集落の除雪終了点辺りから入山しました。快晴の中、シール登高で出発。程なくすると、なだらかな台地に出て、間もなく鍋倉山荘前に到着。小休止の後、黒倉山と鍋倉山の鞍部に突き上げている沢の右岸側を登っていきました。ブナの樹氷が青空に映えて、幻想的な世界にしばし目を奪われました。13時前に黒倉山の東側の稜線に到着。集合写真を撮った後、稜線から少し下った黒倉山の南東向き斜面で雪洞掘削を開始しました。

 自分の所属はB班。メンバーはM尾L、Y崎さん、N田さん、私の4名。掘削場所は、尾根直下の東側斜面の吹き溜まり場所で、上部の雪庇に注意する必要があるけれど、雪洞を掘るのに適した場所との事でした。手袋は冷えと濡れ対策のため、インナーは冬山登山用のウール手袋、アウターはホームセンターで購入した厚手のゴム手袋を使用しました。プローブを横に差し込み、雪の厚さが十分ある事を確認した後、スノーソーで入り口の切り込みを入れ、シャベルで入り口から掘り始めました。入り口のサイズは幅が1m程度、高さは人間が中腰で入れる程度でしょうか。最初は一人が先頭で掘って、他の三人が掘り出した雪を排出する作業分担で、先頭を順次交代しながら掘っていました。しばらくして雪洞内部の横方向の掘削が進み、二人が入れる大きさになった所で、掘削作業二人、排出作業二人に変更。雪の排出量が多くなり排出の効率が悪くなると、ツェルトを排出路に敷き、その上に掘り出した雪を載せ、ある程度雪がまとまった所で、ツェルトを引きずっていって斜面に雪を捨てるという作業になりました。他のある班では、ツェルトの代わりにブルーシートを利用していたのですが、観察していると、四隅+数カ所のハトメに紐で輪っかを作り、その輪っかを束ねて持って、ずるずる引きずって移動していました。こうした方が、雪で重いシートの移動は容易そうな気がしました。掘り進めるほど雪は固くなり、ブレードの先が数センチ程しか入らない位になったので、刺しながらシャフトを立てる様にして、テコの原理で雪をフレーク状に剥いでいきました。固い雪に対しては、シャベルのブレードは金属製の方が良いと聞いてましたが、加えて、ブレードの先端が尖り気味の方が硬い雪に刺しやすいという事で、なるほどと思いました。概ね二時間経過後、壁・天井の凸凹を均して仕上げ作業へ。内部の壁に棚を作り、入り口の上部にツェルトをストックで固定し、左右にツェルトを押さえるスキーを立てて完成。雪洞内部の広さは六人用テント程度ですか。M尾Lから二時間程度で作れる様にする事が肝心との話がありました。あまり広く作ると寒いとの事で、適度なサイズだったように思います。また、入り口付近を掘り下げると、出入りし易く、風も入りにくいとの事でした。夕食のメニューはM尾Lの手巻き寿司。生米を鍋で炊いて、酢飯を作り、刺身と薬味を乗せて、海苔を巻いて頂きました。Y崎さんも、自作の「きのこ漬け」などを出してくれて、贅沢な夕食を頂きました。疲れていた体に酢飯は格別で、食が進みました。自分の山行ではα米中心なので、生米を鍋で炊くというのがとても新鮮でした。その後、A班のT所Lの雪洞を尋ねましたが、広い…。T所L自作のイカの塩辛やマリネなどをご馳走になり、お酒を頂いている内に眠気に襲われ(いつもの事ですが)、途中から記憶が無くなりました。眠気には勝てず、N田さんと自分の雪洞に戻り、速攻就寝してしまいました。C班・D班の雪洞も見学したかったのですが…(汗)。

 翌日、朝食後に雪洞を後にして、黒倉山から鍋倉山まで稜線上をシールで移動。頂上から東向斜面を滑り下りました。まだ時間が早めで雪が緩んでなかった事もあり、滑り易い雪でした。途中、ブナの「森太郎」」の前で記念撮影。台地に下る最後の東向斜面は気持ちよく滑れました。途中、鍋倉山荘で卒業山行の打合せを行いました。残念ながら、震災で卒業山行は中止となりましたが…。

 

 実際に雪洞に泊まってみて、自分なりの新しい知見がありました。

・テントと異なり、コンロを焚いても雪洞内は暖かくならず

・天井から雫がもっと垂れるかと思っていましたが、ほとんど無し(時期的な要因もあると思いますが)

・常時 0℃位とは聞いていましたが、思ったより寒く、冬シェラフでも寒かった

・ロウソクの照明が綺麗(M尾Lは和ロウソクを持ってきていました)

・ロウソクの火は雪洞内の換気の目安にもなる

 

 大変勉強になりましたし、良い経験が出来ました。皆さんありがとうございました。