「潜在的なリスクをいかに見抜き、もし有事が起きた場合はいかに対処すべきか...」 印刷

◆受講生5

 

1.参加動機

 私は当年とって57歳、とっくに体も心も峠を越したかな、と思っています。

20代の学生時代は年間90日程度山に登っていましたが、社会人になるといつの間にか山とも遠ざかり、30年間を漫然と過ごしてしまいました。

しかし、50代になりやり残したことに挑戦しようと思い、昔の仲間と一般的な縦走の他、岩、沢、雪山等の登山を復活させましたが、一昨年、負傷により登山を引退した人から山スキーの三種の神器他の装備を譲り受けました。

今までスキー自体はゲレンデを含め熱心に取り組んだことはないものの、これも天命かと思い、自分なりにゲレンデに数回通いましたが、山スキーとなるとビーコンの使い方等判らないことが多く某講習会に参加したところ、東京山スキー学校(以下TYG)で雪崩から滑走技術まで体系的に教えているとの情報を得て、入校を決意しました。

 

2.各講習について

(1)座学(平成25127日~8日 於:労山会議室)

 労山会議室に行ってみると、元気な若者や屈強そうな中年男性が数名座っていました。

しかし、名簿に妙齢の女性の名前があり一瞬安心するも、当該女性は参加せず自分が最年長だと判ると、果たしてついて行けるかと先行きが少し不安になりました。

 その一方で、講師の方々が山スキーの滑り方、装備、気象、雪洞などを、実に楽しそうに説明されたので、期待も高まりました。

 特に2日目の雪崩の説明は、表層雪崩や禅僧雪崩の違いや発生し易い条件が非常に科学的に説明され理解が進み、また、マニュアルでは理解できなかったビーコンの使い方等レスキューの知識がわかり易く説明され、早く試してみたいと思わせるものでした。

 

(2)実技1(平成26118日~19日 於:白馬栂池高原)

 TYGの実技講習は、講師の車に分乗して集合し前泊しますが、到着後就寝までの宴会がならわしで、しかも講師の到着時刻により各々の酒量が異なるため、早く着いた組は既に出来上がっているのが常でした。

 実技1の際も、一日目の朝は二日酔い状態でしたが、ビーコンチェックが始まるとアルコールは抜けていました。落倉湿原では、講師のビーコンを雪下に埋め生徒が探し出しますが、繰り返すにつれ発見時間が短くなっていくことを実感しました。レスキューは特に時間との闘いで、15分以内に救出すべく個々の技量を磨くとともに人員配置の重要性を理解しました。

 二日目は栂池高原上部で雪崩地形の観察やスペーシング、シャベルコンプレッションテスト等、より実践的な講習を行いました。登山では常に状況に気を配りますが、雪山、特に山スキーは雪崩という発生すれば致命的な事態に陥る可能性があり、リスクがどこにあるかを、常に意識せねばならないことを再確認しました。 

実技1では、1日目は事後対応であるレスキューを、2日目は事前対応である危険予知を、各々学ぶことを通じて12月の座学の有効性が検証でき、やはり山スキーは基本的には知識がないと、実践してはならないことを痛感しました。

 

(3)実技2(平成2621日~2日 於:かぐらスキー場)

 実技2は、天候は2日間とも快晴でしたが、苦手とする滑走主体の講習でした。

一日目は第5ロマンスリフトに着くころにはアルコールも抜けて、清八沢の頭までは何とか登りましたが、そこから黒岩平、雁が峰を経てゲレンデまでの下りは、他の人が難なく滑走してゆくところを何度も転倒し、体力を消耗してしまいました。ゲレンデスキーもさほど経験も無く山スキーに飛び込んだのは無謀だったか、と少し後悔しました。

 二日目は、山スキーの登行は少し慣れて稜線までは快適な登りでしたが、相変わらず滑走は下手くそで、湿雪のせいもありましたが余計な筋力を使い、ゲレンデに戻るころには太腿が攣っていました。しかし、前日とは違い殆ど転倒しなかったため、後悔の念も多少和らぎました。

 実技2では2日間を通じ、やはり山スキーは基本的にはある程度の滑降技術がないと楽しさも半減することを思い知らされました。

 

(4)実技3(平成26222日~23日 於:鍋倉山)

 実技3は、雪洞体験ということで事前準備として装備の軽量化に努めました。

 一日目の天気はさほど悪くありませんでしたが、装備の軽量化に努めたつもりでも荷物が重く、登行はラッセルもあり遅々とした歩行となり、黒倉山直下の雪洞適地に着く頃には、疲労は相当溜まっていました。そこから雪洞堀りが始まりますが、雪の掻き出しは講師や他の生徒の半分にも及ばず迷惑をかけてしまいました。しかし、講師の雪洞への情熱は相当なもので、雪のテーブルを作り、その上で暖かい中華鍋を作って頂き、私自身は少しも役立っていないのに快適に過ごせました。感謝する次第です。

 二日目は朝から快晴で黒倉山から鍋倉山の稜線を快適に登り、頂上からは妙高や日本海、信越トレイルが見渡せ、感動的でした。しかし下りが始まると、ただでさえ苦手な

滑降が、重い荷物を背負うことで、より下手になっていることを自覚しました。転倒する都度荷物を外し起き上がる、これを繰り返し、下へ降りた時には疲労困憊でした。

実技3では2日間を通じ、やはり山スキーは基本的には体力がないと苦しいものとなるため、日頃のトレーニング不足を反省させられました。

 

(5)実技4(平成26329日~30日 於:蓮華温泉)

実技4は、卒業山行として受講生主体で計画・行動するため事前に会合を持ち、不運にもくじ引きで選ばれたリーダーを中心に、ルート等入念に打ち合わせをしました。

一日目は天気は快晴で、受講生が各々地図上で位置確認し、順番にトップに立ち快調に天狗原に着き、そこで講師の方々へ感謝の意を表しました。天狗原から蓮華温泉までは赤布が明確につけられ、事前に打ち合わせたルートを外すことなく進め、予定外に早く目的地に到着しました。さらに到着後、露天風呂まで山スキーで登高し白銀の中の温泉で大自然を満喫しました。

 二日目はTYG第11期講習の最終日でしたが無情にも天気は雨。しかし、受講生同士でコミュニケーションをとりながら、ルートを確認し雪崩地形に気を配り時にスペーシングを実行し、今までの講習の成果を発揮すべく木地屋まで行動しました。

さて、少しは自立した山スキーヤーになれたでしょうか?

実技4では2日間を通じ、やはり山スキーはチームワークが大切なものであることを再認識させられました。

 

3.装備

 冒頭に記載したとおり、今回の装備の多くは他人から譲り受けたものですが、以下の問題がありました。いずれも講師に事前に相談するべきでした。

・プローブ:カーボン製で軽かったものの、レスキュー訓練で雪を掘り出す際にシャベルが当たり脆くも折れてしまいました。金属製がいいです。

・シャベル:大きさが小さく、シャベルコンプレッションテストや雪洞堀りの効率が悪かったでした。大きく軽いものがいいです。

・流れ止め:ジルブレッタ製で長く弛みが出てしまったため、TLTの片足内側のストッパーに引っかかり、ストッパーが曲がってしまいました。

 

4.講習全体を通して

TYGの全10日間の講習は、山スキーの潜在的なリスクをいかに見抜き、もし有事が起きた場合はいかに対処すべきかを体系的に教えて頂き、また、同時に山スキーの楽しさも味わえ、密度が濃く大変充実していました。

それは、講師の方々のご指導及び受講生のチームワーク並びに天候がよかったことが

大きな要因だと思います。

 しかし、本当の講習の成果は、悪天候の際に冷静な判断と適確な行動ができた時と考えていますので、今後も講習のブラッシュアップに努める所存です。

 最後に、講師の方々には、各受講生の体力や技量が揃わない中、安全面に配慮のうえ一定レベルの事項を習得させることは、大変なご苦労があったと推察いたします。

本当に有難うございました。