「バックカントリースキーを目指す者として、決して世間にご迷惑をお掛けするようなことはしたくないと思い、東京山スキー学校に入校した...」 印刷

◆受講生5

 

※表題 

自立した山スキーヤーとして守るべき「山スキーのルール」「自然の掟」と今後の実践について

 

※ポイント

①山スキー(スキーを使った冬山登山)のルールと自然の掟とは何か

②山スキーにおける大きな危険要素である雪崩の対策とレスキューの知識と実践

③山スキー登山の効率の良さと危険性の判断の重要性

 

※内容

1.【机上講習1

今回の募集に対し参加したメンバーは9名。各々雪山経験もスキー経験も参加目的も異なるが、学校としての目的は、各自不足している知識と経験値を高めることで、「自立した山スキーヤー」を育てることにある。

最初は山スキーの概要の説明を受け、装備アイテムについて基本となるスキー板、ビンディング、ブーツについて、更には、三種の神器と呼ばれる、ビーコン、シャベル、プローブについて性能、価格帯、使いやすさ等について解説があった。

私はすでに基本装備は持っていたが、これから購入する人にとってはとても参考になったことだろう。

 

2.【机上講習2

雪崩に関する広範な勉強をした。雪性質と変化。弱層の形成。コンプレッションテストの方法。地形判断。雪の結晶について。雪崩レスキューの方法。プルーブの使用方法。ビーコンの取り扱い方法。電波の性質と探索。コンパニオンレスキューの方法と有効性。

ちなみにコンパニオンとは、仲間、連れ、付き添いなどを意味する英語であり、決して飲み会の時の女性を意味するものではない。

 

3.【実技1

1日目の場所は、落倉自然園。まずはスキーにシールを装着することから始まる。

少しだけ林に入りそこで雪崩講習が開始された。まずはビーコンのチェックの方法。リーダーが「発信モード」にして他のメンバーが「探索モード」にして全員が受信できることを確認する。今まで参加したBCツアーだと、ガイドが客の「発信モード」のスイッチONを確認するだけであったが、コンパニオンレスキューの考え方がベースなので、仲間の誰かが雪崩に巻き込まれた際、仲間がサーチモードにしていかに早く探索に入れるかが救出のための重要な要素となる。

 

コンパニオンレスキューにおいて、先ず大切なことは「リーダーの的確な判断と明確な指示」であると思った。

何故かというと、雪崩発生減少に遭遇したパーティー(たまたま居たその他の人を含む)において、埋没者を一刻も早く救出しないと生命の危機であり、同時に雪崩に巻き込まれたという心理的な同様で何から手を付けてよいのか右往左往するばかりで無駄に時間が経過することを避けることが重要であるからである。

 

雪崩救出の際の行動は以下の通り。

     「何人が埋没しているのか」をそのパーティーのメンバーなどからリーダーは聞きつける。

     「消失ポイント」から下で雪上に「身体の一部」が出ているか、「残留物」等を目視し、全体の中でどこをどのように探索すべきかを瞬時に判断し「レスキュー方針:を決め、メンバーに伝え共有をする。

     動けるメンバーの人数確認と担当の割り振り(主にビーコン探索係、プローブ探索係、スコップ係)を支持する。

     ビーコン探索係とそれ以外の人のビーコンを「サーチモード」にしてもらう。(混線を防ぐ)

     ビーコン探索係の人を消滅地点より以下の残留物や期の周辺部に「電波誘導法」にて向かわせ探索をする。

     プルーブ係、スコップ係はザックから取り出し組み立てをしてビーコン係の後を追いかける。

     ビーコン係は「クロスサーチ」により埋没位置の絞り込みをする。

     位置が特定できたらプローブ係やほかのメンバーにもそのことを知らせる。

     プローブ係は探索ポイントを中心にプローブ探索をする。

     スコップ係は斜面の下に向かい連携して雪を掘る。先頭は疲れるので定期的に交代してどんどん掘る。

     発見できた際にもそのことをほかのメンバーに知らせ情報の共有を図る。

     埋没者は頸椎を損傷していることが多いので、首の位置をなるべく変えずに運ぶ。

 

2日目は、ゴンドラで栂池高原に上がる。シール登行で林道まで上がるだけでも不慣れな人がいた。途中、地形判断で雪崩の跡や雪崩の危険性の高い個所を講師から教えてもらう。また、大きな斜面を横切るときは、メンバー間の間隔をしっかりと取る「スペーシング」ことも学ぶ。早大小屋周辺にて、ピット断面観察、コンプレッションテスト、プローブテスト、雪温測定、雪粒観察、プローブ探索の時の感触等の実技を行う。

その後、移動中に雪崩の実践訓練が行われた。上記の要領で実施すること、リーダーの判断と的確な指示、情報共有(何人埋まっているか、何人発見したか等)を慌てずに実行できるかが埋没者の早期発見のために大切であると思った。

 

4.【実技2

かぐらスキー場にて2日間にわたり実施された。

1日目は、強風でリフトが止まったかぐらのゲレンデをシール登行し、更に、第五ロマンスリフト上部まで進み、そこから深雪を滑って降りた。

主に、ハイクアップの仕方と深雪の滑走技術を学んだ。また、読図についても学んだ。

宿泊は和田小屋にて。なんと、和田小屋を貸切にして、歴代のTYGOB,OGが一同に会し、大宴会が行われた。TYGの結束力の強さや人間のパイプの太さ、山スキーを愛する心意気の強さに感銘を受けた。

2日目は、朝一番でノートラックの深雪を滑った。新設を滑ることの気持ちよさを味わうことができた。

 

5.【オプション】(不参加)

 

6.【実技3

雪崩訓練としての企画。3班に分けての実技講習。読図と雪洞掘についてはある程度受講生の判断をさせてもらい勉強になった。

雪山は他のシーズンと異なり、夏道に沿って上る必要がない。気持ちよく登るのもキツイ登りを選んでしまうのも、リーダーの判断によることとなる。

まして、シール登行だとジグを切るにせよ直登に近いにせよ、メンバーの技量も考えてリーダーが道を切り開くことになるので経験を積むことの大切さを学んだ。

1日目、鍋倉山に登り始めるとき、不用意に大斜面をトラバースしてしまうことになってしまった。斜面の下には他の班のメンバーがいて雪崩を誘発した場合は多くの遭難者が出る危険なコース取りだったことを知り、危険判断の甘さを勉強した。

登行時、尾根筋を行かずに尾根のすぐ下をトラバース気味にコースを設定したほうが比較的楽に上れること、雪質によっては沢筋にコースを取り登るケースもあることを学ぶ。

稜線に到着後、雪洞の設定場所については講師陣が決めてくれた。雪庇の下等で、ある程度斜度がある場所であると学習した。

雪洞は、雪が固くちょっと大変だった。私は過去に3回ほど雪洞体験があるので、「雪の搬出に銀マットを使うと効率が良い」など知っていて実践できた。

全員で協力して作業に取り組むことができ、3班の中で最初に美酒(ビール)を口にすることができた。

翌日はガスがありルート選定が難しかったが、講師陣の的確な指示のもと下山することができた。下山ルート選定の難しさを勉強した。

 

7.【実技4】

当初の計画では、初日に栂池から蓮華温泉に行き1泊し、2日目に木地屋に抜けるというコースであったが、蓮華温泉のオープンが間に合わないということで日帰りで天狗原からフスブリ山を経由し木地屋まで行くルートに変更となる。班は2班に分かれる。私は第2班のSLをやるように言われ、先頭を行く。

地形図とGPSを併用していくが、地形図の等高線は10Mであり細やかな地形の変化は表現できていない箇所があり、読図の難しさを知った。フスブリ山を過ぎてからのルートがわかりづらい。スキーでいったん落としてしまうと取り返しがつかなくなることがある。慎重にルートを見極めて落とす必要があるということを学んだ。

 

8.【終わりに】

また、最後になるが、山スキーは通常の雪山以上に危険性を孕んでいるということをわれわれ卒業生全員が肝に銘じるべきだと思う。今シーズンはシーズン初めから遭難騒ぎが相次いだため、テレビや雑誌等では「バックカントリー」という言葉は「危険ドラッグ」と同等の「思慮を欠いた行動」とのニュアンスで扱われ、私は大変悲しい思いをした。

私は、バックカントリースキーを目指す者として、決して世間にご迷惑をお掛けするようなことはしたくないと思い、東京山スキー学校に入校した。

ここで講師の皆様から学んだたくさんの「自然界の掟」を守りつつ、その自然の一端で遊ばせていただくという謙虚な気持ちを持ち続けていきたい。また、今後、その掟を守らずに山に入ろうとする人には、山スキーを愛してやまない他の山スキーヤーに代わり、「言ってわからなければ殴ってでも止める」ことを、山スキー学校の卒業生として実践していきたいと思った。

ご自身の時間を割いて我々受講生の為に親身になって指導していただいた講師の皆様、本当に有難うございました。ぜひこの伝統を、20期、30期と続けていってほしいと思います。