自分でプランニングして山スキーをする 印刷

◆講習生 3

 

●TYGふたたび……

私は山スキーを始めて2シーズン目にTYG(東京山スキー学校)13期(2015-2016)を受講しましたが、2月に街で怪我をして途中リタイアを余儀なくされました。受講資格は翌14期まで継続していましたが、自分の中でのモチベーションが続かず再受講は見送りました。その後所属している町田グラウスの先輩たちに助けられて、シーズン10回弱の山スキー山行を重ね、徐々に山スキーの面白さや怖さがわかるようになってきました。

2018年4月に、山スキーを始めた時からの憧れだった八甲田山に、女性の先輩と2人で行くことができました。念願かなった喜びと同時に「(連れて行ってもらうのではなく)自分でプランニングして山スキーをする」という新しい課題が生まれたことを強く感じました。そして、この課題を意識したときに、自分の大きな「わすれもの」であるTYGを再受講しようという気持ちが生まれました。また、所属している会の外で学んでみることで見えてくるものが多いのではないかという期待もありました。ただ、4年間のうちに自分の年齢が上がってしまい、自分の仕事も(人手不足のため?)忙しさを増していので、体力と時間に不安を抱きつつの入学でした。

12月初旬の開校式。今回の受講生は8人。山の会に属さない方が2名、太田山の会から3名、グラウスから3名でした。太田では山スキーをする会員が少なくなり、こうした機会に学ぶしかないとのことでした。毎年先輩たちと山スキーに行っていた私は、『他会はそのような状況なんだ』と少し驚きました。

 

●雪と雪崩の勉強(第1回机上・第1回実技)

この机上と実技は13期で経験していましたが、この間、那須の高校生遭難という大きな事件があり、受講した理論も実技も深さが増したことを感じました。ビーコンのグループチェックの新しい方法をはじめ、講習内容も未経験のことが多かったです。

12月の飯田橋机上講習の後、テキストと後日提出するべき課題(問題用紙)が渡され、これはボリュームがありとても苦戦しましたが、おかげでとても実になったと思います。

実技でもっとも印象的だったのは、初日に谷川の天神尾根で行った雪質観察です。全員で高さ1.5m幅10m弱の雪の壁を掘り出し、その後、この1.5mの層の雪の固さ、結晶の形、温度、密度等を詳しく観察しました。この観察には1時間ほどかかり、晴天でしたが尾根は風があり指先までジンジン冷えてきました。こうした大規模かつ精密な観察はこの機会でなければ不可能だろうと思いながら、足踏みしながらメモを取り続けました。

また、2日目は雪崩救助犬のデモがありました。これもこうした機会でなければ見ることができないものです。3頭の犬の捜索の巧拙も興味部深かったですが、見ている私は『実際には救助ではなく遺体捜索なんだなあ』と思い、決して雪崩に遭うまいと思いました。

悔しかったのは天神尾根からの滑走がぼろぼろだったことです。私にとっては雪がふかふか(パウダー&深い)すぎて腰が引けて転びまくり、最後の下山コースはももがパンパンでハの字で下りました。

あ、それ以前に大失敗しました。スキーウェアの「下半身セット」を忘れて、レンタルさせていただいたことです。数日前から少しずつパッキングするのは時間がない私には適した方法ですが、やっぱり直前に計画書で再チェックしなければ……。

 

●吹雪と深雪・事故と救援(第2回実技)

2回目は神楽が峰での基礎滑走講習でした。厳冬期とあって積雪量も気象条件も厳しい中(途中から吹雪)、初日はゲレンデトップから神楽が峰までラッセル、シール登高、キックターンの練習をしました。今シーズン私が一番上達したと思うのは、この時丁寧に教えていただいた山回りキックターンです。この講習の後、緩い斜面でもキックターンをするようにし続け、5月のグラウスの山行では「超開脚&ちょこっと手も使うターン」なるものを編み出し、急斜面を乗り切りました(笑)

雪質チェックのCTテストをし、下山(滑走)開始の直後事故が起こりました。この時のレスキューの緊迫度は忘れられません。また、私はA講師とともにゲレンデ経由で宿に戻りましたが、じゃんじゃん雪が降ってゲレンデに戻るまでの視界も明瞭ではなく、天候による行動の困難さを感じました。

あの事故について感じるのは、気象条件によってレスキューの困難さが激変するということです。スキー橇も背負って降りるのも、雪が締まっていて晴れていたらできたかもしれませんが、あの条件では難しかったです。現場に残って救援を待った方たちは、過酷な条件での貴重な体験をされわけで、そこから身につけたことを私たちも学びたいと思います。

翌日は、雪が降る中、ゲレンデで、横滑り、木の葉落とし、ギルランデなどの山で役立つ滑走法を繰り返し練習し、その後非圧雪の深雪を滑る練習をしました。この時は体調が良かったこともあり、積極的にチャレンジして滑ることができたと思います。深雪は気持ちが負けてしまうと滑れないので、メンタルがとても大事だと感じました。

 

●雪洞訓練(第3回実技)

山スキー学校に入校した当初から最も期待と不安が大きかった講習です。「雪洞」そのものが未体験だったこと、そもそも泊まりの荷物を背負って山を滑り降りることができるのか(滑れなければ帰れない)ということが大きな不安でした。

当日は二日間とも天候に恵まれ、初日は3時間ほどのハイクアップで稜線の雪洞設営予定地に到着。雪の量も十分。ところが連日の晴天で雪が予想よりも締まって硬かったため、スコップどころかスノーソーも入らず、なにをどうしても掘り進めませんでした。1月に雪崩のトレーニングでベルトコンベアーで掘った時とは大違いです。さらに氷板の層が見えた時にはかなり絶望的になりました。4時間格闘して何とか掘ることができました。私は「排雪係」に徹しましたが途中から腰が痛かったです。さて、掘る苦労に比べ、雪洞内の生活は快適で楽しかったです。テントより広いし、静か。壁を削ると水を作ったり、燭台や小物置きまで作れるので、DIY好きの私は時間があればもっともっと部屋を飾りたかったほどです。B・C両講師の食事も美味。寒さもそれほどでなくダウンを着込んでスリーシーズンのシュラフで眠ることができました。翌朝、起きると青空が目に染みました。

さて、空身で鍋倉山山頂を往復した後、いよいよ荷物を背負って滑走です。私はギリギリまで荷物を減らしたので、他のメンバーに比べるとずっと軽かったはずですが、最初のターンでは腰が引けて崩れるように転びました。でも、一度転んだらコツが少しわかり、そこから先は怖がらずに降りることができました。鍋倉山は4回ほど来たことがあり、いつも後半は雪が重く感じられて疲れてしまっていたのですが、今回は先生方がコースを選んでくださったおかげもあり、もちろんパウダーを楽しみながらなんて無理でしたが、最後まで余裕を持って滑ることができました。

 

●受講生だけのコース判断(第4回実技)

卒業山行は栂池スキー場~天狗原~蓮華温泉~木地屋の1泊2日のクラッシックな春のツアーコース。5年前にガイドツアーで同じコースの経験があったので、体力・技術的な不安はあまり感じませんでしたが、問題は何と言ってもルーファイ。晴れていればともかく、天候が悪い場合でも原則GPSは使わずに行動するという目標を示されたからです。いままでも山行前には1/25000地図にルートと標高を入れ、必ず予習して山にはいっていましたが、正直なところ「本当に地図だけで大丈夫かなあ」と思っていました。横浜でミーティングしたときに、Dさんが精密な地図を用意し、チェックポイントも考えてくださったので、とても安心したのを覚えています

一日目、風はあったものの視界がありルートは大丈夫そうでした。ただ、天狗原の強風はやはりいつも通り。止まってピットを掘ることが必要かつ有効なのか、しないという判断もあるのではないかということで、そのまま滑降することにしました。地形や天候を見定めて臨機応変に行動することの大切さを知ったと思います。また、蓮華温泉前の沢状地形では、どの沢にいるのかわからなくなってしまいGPSを取り出しました。

無事に蓮華温泉に到着し、やや疲れて「外湯はパス」と思ったのですが、EさんとFさんが誘ってくれ、4人で露天風呂にシールで歩いていきました。お風呂も気持ちよかったし、帰りにスキーを履いて滑ってくるというのも素敵な体験で、春の蓮華温泉の楽しさを満喫しました。

二日目も天候に恵まれ、峠を越えて木地屋までのコースを不安なく行くことができ、無事に卒業山行を終了しました。

 

●得たものは多く

講師の先生方、講習生のみなさん、本当にありがとうございました。4年越しの大きな「わすれもの」だったTYGの講習を終えることができて、感無量です。グラウスでの講習・山行では身に付けることができない知識や技術がたくさんありましたし、仲間と協力して山行を成功させるという体験もさせていただきました。

今後は、ここで学んだことを生かして「自分で計画して仲間とともに山スキーに行く」山行を重ねていきたいと思っています。

また、自分の所属している山の会の外で学び、山行することはとても有効なことだと実感しました。どのような組織でも、その中に浸かっていると見えなくなってしまうこと、解決法が見つからなくなってしまうことがあります。私もグラウス4年目の昨年ごろから、そうした「出口のない壁」のようなものに囲まれてしまって悩むことが多かったのですが、今回グラウス外の方と山行することによって吹っ切れたことが多かったです。またグラウスの仲間である富永さんと鈴木さんのたくさんの素晴らしい面を再発見し、頼れる山スキー仲間として再認識できたことも本当にうれしいことでした。

来年もこのメンバーで和田小屋と蓮華温泉には必ずご一緒したいですし、それ以外にも山行を計画して実現したいと思います。みなさんどうぞよろしくお願いします。