私がどんな山行にも必携している大き目ツェルトの出番が来た 印刷

◆講習生 4

山スキーをはじめてから経歴だけは14年になろうとしている。もともと山岳会で岩・沢・雪山とオールラウンドにたのしむ一環としてはじめた山スキーは,転勤で山岳会から抜けていた時にも細々と続けていた唯一のジャンルであった。

とはいえはじめた時のままのスタイルで最近の進歩についていけてないのでは,またいつの間にか我流になったりおろそかになってしまった技術がないか,あらためて点検したいという動機で,本講習に参加することにした。

今回の講習では,なかなか得難い体験ができた。雪洞掘りではこれまで遭遇したことがない硬い氷の層に苦戦した。体全体を押し込んで掘り進む重機のような講師陣を見て「この程度の硬さは力づくでなんとかなるのか」と素直に感動していた。また雪山をはじめた時から使っていたビーコンがいつの間にかポンコツになっており,受信距離が正しく表示されていないことが分かったのも良かった。だが一番心に残りまた考えさせられたのは,参加者が滑走中に脚の筋肉を傷め滑走不能になった事故のことである。

まず自力搬送は,講師の一人が負傷者を背負って搬送しようとしたが雪質と地形上の困難からあきらめ,半雪洞ぽく雪面を整え負傷者を保温しながら救助隊を待つことになった。半雪洞では保温のために負傷者に身を寄せながら数人のメンバーがうずくまり,覆いとしてツェルトを2枚使った。私がどんな山行にも必携している大き目ツェルトの出番が来た。

それから携帯電話でスキー場・警察・消防に救助・搬送を要請した。所在位置を知らせるには携帯電話のGPSが役に立った。とはいえスキー場は別件の負傷者搬送でソリが出払っているなどで,搬送準備はすぐにできるものではないようだった。またそれぞれの要請先は連携して動くわけではなく,要請者が統制本部のようにそれぞれの要請先と連絡をとらなくてはならないというのも知った。

そのまま時間だけが過ぎていき,とうとう警察からは当日中に搬送できない場合にビバークできる準備があるかどうかを打診してきた。食料・飲み物はあるが寝袋・火器はなく,そのままの姿で寒い夜を耐え忍ぶ可能性も出てきたが,結局はスキー場がソリを出してくれることになり,搬送することができた。

私が考えたのは,結果的にソリで運んだことから自力搬送の選択肢はあり得たかということだが,スキー板でソリを組むには装備が足りなかったようだ。山スキー事故での搬送について会でも話題にしてみたが,「ソリはつくるのも大変でツェルトで巻いて搬送するのがいいのでは」あるいは「自力で搬送手段をつくっても雪面を運んでいくのが大変で,スキー場備付のソリは硬くて運びやすくできている」など意見が出た。だから自力搬送をあきらめ救助を待ったのは良かったのかもしれない。ただ自分としても搬送法を習熟しておきながら,判断として救助を待つということにしておきたいと思った。

またなんとか当日中の搬送ができた理由として,携帯電話が通じたこともあると思う。携帯電話が通じない場合は救助隊の待機場所まで分遣隊を出すことになるが,今回でもアマ無線機がパーティ内での連絡に非常に役立っていたことから,連絡手段としてアマ無線機の携帯はもっと見直されてもよいと思った。

本稿では事故対応の件にしぼって書いたが,雪質と気象についての知見を学んだことや,コンプレッションテストやビーコンチェック・掘り出し作業の手順を確認できたことなど本講習で得たことは多く,参加して本当に良かった。また受講メンバーが実に気分よく,「こういう人たちとこれからも山スキーをやっていきたい」と思える出会いだった。惜しいのは夏の交通事故で傷めた左足が治りきらず,満足な滑走ができなかったことだ。筋肉の治癒がこんなにも時間がかかるものだとは思わなかったよ,とほほ…。山行と同じくらい車にも気をつけないと。